「うちの子はいじわるなの?」優しい子に育つために親ができること
コリー先生! 娘のメリーがとんでもなくいじわるな子かもしれないメェェ!
羊二郎さんは、メリーちゃんのどんなところを見て、そう感じたんですか?
メリーがおもちゃで遊んでいたら、ある子が「貸して」と言ってきたんだメェ。それなのに、メリーは「ダメ!」って貸してあげなかったメェ。いじわるだメェ
メリーちゃんは2歳でしたっけ?
2歳と6ヶ月になったメェ。おもちゃを貸してほしいといってきた子は、メリーよりもっと小さい子だったメェ。なのに…メリーは…本当にやさしくないメェ。
羊二朗さんは2歳のメリーちゃんに何と言ったんですか?
「お友だちには優しくしなさい!!」と叱ったメェ
羊二朗さん、優しいって何ですか?
え!?
【超難問】優しい子ってどんな子?
優しいとは…それはまた深い質問だメェ…言葉にするのは難しいメェ
そうですよね。大人の羊二朗さんでも難しいんです。それを2歳のメリーちゃんに「優しくしなさい!」と言ってメリーちゃんは理解できるでしょうか?
優しい…やさしい…ヤサシイ…
羊二朗さんの頭がショートしそうなので、まずは優しさとは何なのかを見ていきましょう
みなさんは、優しい子と聞いてどのような子を思い浮かべるでしょうか。
- お友だちが靴を履いているとき、そっとそばで待てる子
- 困っているお友だちに手を貸してあげられる子
- ママやパパのお手伝いができる子
日々子どもたちと関わっていると、優しいと感じる場面はたくさんありますよね。
「優しい」とは相手の気持ちを理解・共感し、思いやりのある行動をとることです。
しかし、1、2歳の子どもはまだ何が「優しい行動」なのかを知りません。
それでは子どもたちはどのように「優しい」を理解していくのでしょうか。
子どもたちは段階を追って「優しい気持ち」を育んでいくといわれています。
■優しさが育まれる段階
- 3歳:優しさや思いやりが芽生え始める
- 4歳:身近な人にやさしくできる
- 5歳:身近でない人にも優しくできる
実は、子どもたちが年齢を重ねながら優しい気持ちを獲得していくためには、親の関わりがとても重要になってくるのです。
ということは、メリーはいじわるな子ではないってことだメェ?
2歳のメリーちゃんは、優しさを育んでいる最中ということですね。ここで親が間違った関りをしてしまうと本当にいじわるな子になってしまう可能性があるんですよ?
優しい子になる!親がやるべき5つのこと
羊二朗さん、ここからは優しい子に育つ親の特徴ベスト5を紹介していきますので、よーく聞いていてくださいね
メリーにいじわるな子になってほしくないメェ。しっかり聞くメェ
第5位|「ありがとう」をたくさん言う
ありがとうを言えばいいメェ?なんだか簡単な気がするメェ
簡単そうに感じますが、振り返ってみて1日にどのくらいメリーちゃんに「ありがとう」と言っていますか?
そう言われると…
「ありがとう」は日常でもよく使う言葉ですが、意識して子どもに言っている親は意外と少ないんです
1、2歳の子どもたちはまだ「優しい行動」がどんな行動なのかを知りません。
「優しさとはなにか」を子どもたちは1番身近な親との関わりの中から学んでいきます。
例えば、パパが食後に、自分が使ったお皿をシンクまで運んでいました。
その様子を見ていた子どももパパの真似をして一緒にお皿を運んできてくれます。
このときのお皿を運ぶという行動の動機は、パパがやっていることの真似っこだっただけかもしれません。
でも、自分がお皿を運んだらパパやママが「ありがとう、助かったよ」と言ってくれた。
子どもは「パパとママが喜んでいる、自分がしたことでママやパパは助かったんだ」と感じます。
このように人が喜ぶ行動をたくさん経験し「ありがとう」という言葉をたくさん言ってもらうことで、相手がどんなことで喜ぶのか・相手のために自分は何ができるのかを自分から考えるようになります。
もしここで、「お皿が割れるから、置いておいて!」と言われてしまったら、喜こんでもらえる経験も「ありがとう」を言ってもらう経験もできないままに育っていきます。
お皿を割ってしまいそうで危ないのであれば
「こっちの(割れない)コップを持ってきてくれるかな?」
「ありがとう。とっても助かったよ」
と、代わりのものを提案し、気持ちを認めてあげましょう。
ありがとうをたくさん言ってもらうことで、相手を思いやる優しい行動を知っていくんだメェね
そして「ありがとう」をたくさん言ってもらって育った子は自己肯定感が高い子に育つと言われています。自己肯定感が高いと、他人にも優しくできる傾向にあるんですよ
「ありがとう」は大事な言葉だメェ。さっそくメリーにもたくさんありがとうを言うメェ
第4位|感情を否定しない
羊二朗さんは、メリーちゃんがお友だちにおもちゃを貸さなかったときなんて言ったんでしたっけ?
「お友だちには優しくしなさい!」とメリーを叱ったメェ
子ども同士でトラブルになったときに親が取りがちな対応なのですが、そこに大きな落とし穴があるってご存じでしたか?
知らないメェ…落とし穴、恐いメェ
これをやってしまうと、優しい子どころか無気力な子になってしまう可能性もあるんです
それは困るメェ!
児童館や公園などたくさんの子どもが集まる場所での子ども同士の小さいトラブルは、よく見られる光景です。
トラブルを大きくしたくない気持ちから「貸してあげなさい!」と言って、お子さんの気持ちに蓋をしていませんか?
その行動は
「まだおもちゃを使いたい」
「貸すのは嫌だ!」
と思っている感情を否定してしまっています。
子どもは2歳ごろから「遅延模倣」という行動をとり始めます。
これは親にしてもらったこと・されたことを記憶していて、時間が経った後の別の場面で同じような行動を真似してやってみることをいいます。
自分がおもちゃをまだ使いたいと思っていた感情を否定されて、おもちゃを無理やり手放さなければならなかった経験が後になって同じような行動にに現れるということですね。
自分の気持ちが無視されたという経験は、相手の気持ちを無視するという行動につながっていくのです。
それでは、お友だちとトラブルになりそうなとき、親はどのように対応したらよいのでしょう。
まずは「まだ使いたかったんだね」とお子さんの気持ちに共感してあげてください。
そしてその後で「ほかのお友だちも使いたいみたいだから、順番でしようね」と、こういう場合はどうしたら良いのかを伝えます。
最初から貸せなくてもいいのです。
「貸して」と言われて「貸してあげられなかった」というのもひとつの経験です。
年齢が上がるにつれて、相手の表情や行動を見るようになり、おもちゃを貸してあげなかったときに相手がどんな気持ちだったのかを少しずつ考えるようになってきます。
そして、優しい行動とは何かがわかってくるのです。
ということは、ミーの対応はメリーの行動を否定していたということメェ…それにしてもコリー先生、無気力になるは言いすぎなんじゃないかメェ?
それがそうでもないんですよ? 子どもは自分が素直に感じた感情を否定されると、どんどん自分に自信が持てなくなります。「自分のやることは全部いけないことなんだ」と感じたら何もやる気になれず、無気力になってしまってもおかしくないですね
ガーーーン!!
第3位|気持ちを言語化する
子どもはパパやママに自分の話を聞いてもらう時間が大好きです。
その日に保育園であった出来事や、兄弟とのやりとりを聞いてもらうことで「ママが話を聞いてくれた」「パパに認めてもらった」と感じます。
話を聞いてもらえたことで、気持ちが安定し満たされるので、他の相手に対しても優しくなれます。
幼児期の子どもたちのお話は
「今日ね、保育園でね、お散歩に行ったよ」
「○○ちゃんと、ブロックを取り合いっこした」
といったように、実際に起きた出来事が主になります。
そこで、パパやママが
「お散歩に行って楽しかったんだね」
「○○ちゃんとケンカになって悲しかったね」
といったように「感情」や「気持ちの変化」を言語化してあげましょう。
そうすることで
「あのときの気持ちは楽しいっていうんだ」
「悲しい気持ちってこんな感じなんだ」
と子どもたちは覚えていきます。
そして感情を理解することで人に対しての共感力が生まれます。
大人も、"なんとなくモヤモヤするな…今日は気乗りしないな…"というとき「昨日上司に怒られて悲しい気持ちなんだ!」と自分の気持ちを言語化することで頭の中が整理された経験はないですか。
子どもたちも"なんだか○○な気持ち”というモヤモヤを"悲しい気持ち“と知ることで自分の気持ちを整理できるのです。
そして、感情を言語化することで相手の気持ちを理解し、思いやる力が身につきます。
おもちゃを貸したくないメリーの気持ちにまずは共感してやるべきだったメェ。「まだ使いたい」そう言語化してやれば「ダメ!」の一点張りだったメリーの気持ちが整理できたということなんだメェ
羊二朗さん、正解です。子どもが今どんな感情でいるのかを言語化して気持ちの整理を手伝ってあげることで共感力のある子供が育っていくのです
第2位|体験を一緒にする
体験を一緒にするというのは、子どもと一緒に遊ぶってことだメェ? ミーはこれはできていると思うメェ
一緒に遊ぶことは大切です。せっかくなので3つのポイントをおさえて遊ぶことでメリーちゃんがさらに優しい子に育つかもしれません
そのポイント、早く教えてほしいメェ!
■体験を一緒にするときの3つのポイント
- 一緒に遊んだ後、体験を振り返る
- 子どもが夢中になっているものに親が参加する
- 親子で新しいことを始める
ポイント1|一緒に遊んだ後、体験を振り返る
子どもと楽しい時間を過ごした後、そのまま楽しい思い出としてその日を終わらせる前に一緒に遊んだ体験を振り返ってみましょう。
例えば、いつもより大きな公園に遊びに行ったあと
「今日の公園、いろんな遊具があってワクワクしたね」
「高いすべり台から滑るとき、ちょっとドキドキしたよね」
と子どもの気持ちを言語化するとともに、親が感じた気持ちも話します。
そうすることで子どもたちは「パパやママも楽しかったんだ」と思いを共有できる喜びを感じます。
ポイント2|子どもが夢中になっているものに大人が参加する
子どもが何かに夢中になっているとき、そっと見守ることも大切ですが、ときには親の方が教えてもらう気持ちで一緒に参加してみましょう。
自分が夢中になっている遊びに親が参加することで、子どもは自分を認めてもらえているという満足感を感じます。
パパやママと同じことをして、同じ思いでいる。
これが「思いの共有」の経験になり、共感力を育むのです。
これは、親の趣味を子どもが一緒になって体験する場合も同じです。
「パパやママがとっても楽しそう」
こんなふうに一番身近な存在のパパやママが楽しんでいる姿を見て、子どもは相手の気持ちを感じ取る経験を積んでいきます。
ポイント3|親子で新しいことを始める
新しい体験はたくさんの感情を生みます。
それを親子で一緒に経験することで、感情を言葉にして共有できる良い機会となるでしょう。
そして、親が困っている人を助けたり、居合わせた相手とコミュニケーションをとる姿を見ることで、いざという時に親の姿を思い出して対応する力を身につけます。
パパやママがした行動に対して相手が「ありがとう」と言ってお礼を言ったり喜んでいる姿を見たときに、子どもはパパやママのようにしたら人は喜ぶんだと学びます。
親が子どもの良い見本となって、相手を思いやる行動を伝えることができるのです。
また、子どもは新しいことに挑戦するときに大人以上に緊張や不安を感じます。
そんなとき、近くに親がいることで安心感を感じ、困ったときはパパやママが助けてくれるという体験をすることで、人に対しての信頼感を得ることができるのです。
子どもにとって人間関係の一番最初は親との関わりです。
親を心から信頼できる関係ができていれば、そこから輪を広げていき周りの人との信頼関係もスムーズに築くことができます。
羊二朗さん、子どもと一緒に体験をする大切さがわかりましたか?
よーくわかったメェ! 次の休みの日には家族そろってミーの大好きな釣りに行くことにするメェ
ひつじって釣りするんだ…
第1位|ストレスを少なくする
ストレス? んん!? なんだかさっきまでとちょっと違う気がするメェ。優しさとストレスがどうして関係しているんだメェ? それにメリーはまだ2歳、ストレスなんて感じているのかメェ?
子どもは大人が思っている以上にストレスを感じているんです
どういうことだメェ?
子どもは初めて行く場所や初めてする体験に対して、大人が思う以上に緊張や不安を感じます。
大人は新しい場所に行くにしても、ある程度下調べができますし、今までの経験から想像することもできます。
しかし子どもにとっては、知らないスーパーに行くにも、知らない病院に行くにもこれから何が起こるかわからないので大人が思うよりずっとストレスがかかっているのです。
大人も忙しくて家事がはかどらず、洗濯物は山積み。
さらには夫婦喧嘩をしてストレスフルな状態のとき、人に対して優しい気持ちになれるでしょうか。
大人も子どもも、自分の気持ちに余裕がないと人に対して優しくするのは難しいものです。
子どもが心を休ませられる1番の場所は家庭です。
その家庭で親同士がギスギスしていては子どもは落ち着きません。
親が家庭で子どもにできることは、安心して過ごせる環境を作ってあげることです。
必要以上に叱らず、話をしっかり聞いてもらうことで子どもの心は満たされ、安定した気持ちで周囲の人に優しくできるようになります。
ストレスとやさしさの関係がわかったメェ!子どもたちが安心して家で過ごせるように妻の羊子とも仲良くするメェ。そしてメリーの話をよく聞いてやるように心がけるメェ
羊二朗さん、わかっていただけて安心しました。これからどうしいていったらメリーちゃんが優しい子に育っていくのかポイントはおさえられましたか?
ばっちりだメェ! どんどん実践していくメェ! コリー先生、ありがとうだメェ
【まとめ】優しい子が育つ親の特徴
ここまで、優しい子が育つ親の特徴についてみていきました。
乳幼児期の子どもたちは「優しい」とは何かをまだ知りません。
一番身近な存在であるママやパパの言葉や行動を真似て少しずつ「優しさ」とは何かを知っていくということがわかりましたね。
優しい子が育つ親の特徴
- 「ありがとう」と言われる経験をたくさんさせる親
- 悔しい、悲しい、嫌だなどの感情を否定しない親
- 子どもが感じた気持ちを言語化できる親
- 子どもと一緒にいろんな体験する機会をもつ親
- ストレスが少なく過ごせるように工夫している親
子どもが「優しい行動」や「思いやる気持ち」を育むためには、周りの大人の優しさにたくさんふれながら生活することが大切です。
「ありがとう」を伝える機会はパパやママがアンテナをはることでたくさん見つかります。
お子さんのちょっとした行動に「ありがとう」を見つけてたくさんの優しさを育てていきたいですね。